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チチハル鶴之湯温泉

場所

中国チチハル市铁峰区

主要用途

温浴施設(水着着用温泉施設、レストラン、休憩室、マッサージSPA、娯楽室)

延床面積

11,357.03sqm  

施主

明道集団

設計期間

2010年11月~2013年7月  

状態

竣工

其他

照明デザイン:角館政英
サインデザイン:氏デザイン

中国黒龍江省の辺境都市チチハル。ロシアとの国境に近いその地に、扎龙湿地という丹頂鶴が飛来する巨大な湿地帯があり、毎年多くの観光客が訪れる。その湿地のほとりに鶴之湯という温泉療養施設をつくった。

同時収容最大人数が850人、多い日で1日に2000人が訪れるという大規模温浴施設である。


このプロジェクトに対し、私たちは主には下記数点を考えて設計した。

1)安心を与える強い存在感
ここは大都市のように便利な場所ではないし、山あり谷ありという景色の変化もないし、温暖な優しい環境でもない。ここは極寒地で、冬にはマイナス40度にもなり、見渡す限り雪の白い地平線が広がる場所である。遠くから訪れた観光客は、初めは見たこともない景色に驚き感動はするものの、移動する間じゅうずっとその景色に囲まれていると、次第に心が殺伐としてくる。
そこで、そういった来訪客の心理を安心させるような力強さや包容力が必要と考えた。黒を基調とし、まっすぐに延ばしたボリューム力強い外観で、荒涼とした一面真っ白の厳しい環境の中でも、負けずに強く建ち、来訪客を待ち続けているような印象を与えるようにしている。

2)湿地との呼応
全ての空間を軸線を強調した筒状の空間とし、それを湿地に向けて配置することで、チチハル市最大の特徴であるZhalong湿地との呼応をつくった。来訪客はどこまでも続く地平線の中を通ってやって来るので、彼らの意識は広大さに慣れきっていて、拡散している。その彼らに直接湿地を見せるのではなく、いちど奥に延びるような空間を経て、その先にある湿地を見てもらうようにした。それは広い湿地をより感動的に見せ、自分との呼応をより強く感じてもらうためである。

3)来訪客の体験
この温泉施設は普段の生活から開放された非日常性を楽しむところである。普段とは違う驚き、楽しみ、喜びを感じてもらいたいと思う。そのため、施設に到着してから帰宅するまでに経験する一連の空間について、それぞれの対比を意図的に強くした。それは例えば、湿地への強い軸線を持ち黒く迫力のあるエントランスホールで高揚感を感じながらチェックインをし、一旦天井高を低く抑えた明るく穏やかな廊下を通って少し落ち着かせ、水着に着替えたのち、突如、湿地に向けて延びた温泉の大空間に出る、というような、空間の大小や明度や色彩や素材感を総動員した対比のことである。こういった強い対比を持った空間を連続的に体感させることで、温泉の非日常性をより強く感じてもらえるようにした。

4)管理の合理化
ここは大都市ではなく、非常に辺境の場所である。そのような場所で多くのスタッフを探すことは容易ではない。また、例え大都市であったとしても、このような大規模施設を運営するためのスタッフは膨大な人数になる。そのため、合理的な管理動線計画がとても重要である。
この施設における管理は大きく3つ。それ総合管理、接客や清掃を担当するサービス、そして飲食サービスである。それらは各々独立した出入口を必要とするが、相互に連携する必要もあるため、3つの出入口すべてを北東角のバックヤードに集中させ、外部から車で直接アプローチできるようにしてある。また、管理で最も煩雑な仕事の1つである「タオルのサプライと回収」についても、男女両方の更衣室から合理的にアプローチできる管理倉庫を設け、そこから出入口へのアプローチが行えるようにもしている。


このように設計を行い、この地にふさわしい、長く愛され続けることのできる建築ができたと思っている。